社員が主役になるときTHE HERO

「金融システムの最難関」へ、
ユーザーと共に挑む

私は入社以来、年金システムの開発に携わっていました。
しかし、入社したばかりの私にとって年金システムは複雑で、
覚えるべき専門知識も非常に多い。
ユーザーである銀行員との打合せに、先輩と同席するものの、
飛び交う会話を理解できないことがよくありました。

先輩の指導の下、日々の業務に取り組みながら知識を吸収していく、
そんな地道な毎日に転機が訪れたのは、入社から4年目のことでした。

とある打合せが終わったとき、
同席していた一回りも年上であろう銀行員から、
「わからないことがあれば聞いて」と一言。
このシステムが担う目的や役割、年金制度の考え方など、
疑問に思うことは何でも教えてあげるから、と申し出てくれたのです。

どうせやるなら、難易度と専門性が思いきり高い仕事がいい――。
漠然と温めていた目標が明確なものとなり、
将来を見据えてチャレンジしようと思えたのが、このタイミングでした。
「一緒にやっていこう」
今思うと、ユーザーである銀行員から、
そう言ってもらえたように聞こえたのかもしれません。

私が極めようとしたのは、数ある金融システムの中でも
高度な知識を要するといわれる年金信託業務に関するシステムでした。
確率・統計学を中心とした複雑な数理的知識を活用し、
年金制度にまつわるコンサルティングなどを行うこのシステム。
もちろん、そう簡単にマスターできるものではありません。
それでも、プロが近くにいて、教えてくれる。
自らが目指す、その先への追い風――。
これ以上恵まれた環境は、そうあるものではないと思いました。

以来、彼は銀行本店から週に一度、私たちと接点を持つべく、
システム開発拠点のある府中を訪れ、
難解な年金業務とシステムについて情報を共有してくれました。

さらに私は彼とコミュニケーションを密に図ることで、
現状システムの課題、新たなニーズ、
そして「先々はシステムをこうしていきたい」という要望を聞き出していきました。
せっかく寄せられた信頼、そして期待に応えたいという思いから、
とにかく必死に勉強したことを覚えています。

やがてあるとき、その銀行員から、
「システムについてちょっと相談したいから、銀行本店に来てくれないかな」
と声をかけてもらいました。
その相談の内容とは、
「年金システムを旧来のホストシステムからサーバーOSに切り替えるのを機に、
新しい機能を持つシステムに作り替えたい」という大がかりなもの。
そこから大掛かりなシステム刷新プロジェクトがスタートし、
私はサブリーダーに指名されたのです。

プロとして、頼りにされている。
5年かけて、やっと顧客にとっての“パートナー”になれた。
私は、そう実感することができました。

そこから約2年をかけたプロジェクトは無事成功。
銀行員やパートナーも交えたカットオーバーパーティも、和やかに行われました。
今でも忘れられないのは、そこでかけられたユーザーからの言葉――。
「このシステムのおかげで、私の仕事も次のステップに進むことができた。
これからも君にこのシステムを、そしてその先の業務を支えていってほしい」
それは、この会社に入って初めて、自分が“主役”になった瞬間でした。

その後も私は、リーダーとして幾つかのプロジェクト案件を手掛け、
そのたびにユーザーとは
「よいものをまた作りましょう」と言葉を交わし合ってきました。

あれから10年が経ち、別の部署に異動した現在も、
彼との絆は変わることなく続いています。
そしてあのころ学んだ
「自ら意見を発信し、やりたいことを実現していくからこそ、仕事は面白い」
という考え方は、今なお私を支える大切な指針。
自己成長のための日々の積み重ねが、
いつか必ず、自分をそのステージの“主役”にするのだと、
私は信じています。